トリン寺（Tholing Monastery）

**トリン寺（Tholing Monastery）**は象泉河のほとりに位置し、チベット暦の火の猿の年（西暦996年）に、古代トゥボ王国の子孫であるジデ・ニマゴンの孫、イェシェ・オーによって建立されました。著名な訳経僧 リンチェン・サンポ（958～1055年）のために仏典翻訳を目的として建てられ、アリ地方で最初の仏教寺院とされています。1036年、ベンガル出身の高僧 アティシャがチベットに入った際、グゲ王は経典翻訳と布教のため、トリン寺を拡張しました。これにより、トリン寺はグゲ王国の仏教文化の中心地となりました。

🇯🇵 トリン寺（托林寺）：西チベットに舞い降りた「飛翔の寺」
トリン寺（チベット語で「飛翔する寺」を意味する）は、ザンダ県の象泉河（サンチュエン川）沿いの台地に位置しています。背後には壮観な**土林（アースフォレスト）**が広がり、正面には川の流れがあり、堂塔や仏塔、壁などが星のように点在しています。

高台から眺めると、寺全体が立体的なマンダラ構造を成しており、圧倒的なスケール感を感じられます。特に仏塔の遺跡群は、日の出・日の入り・星空の撮影スポットとして絶好のロケーションです。

タルチョ（祈祷旗）、マニ石、仏塔、そして土林が織り成す風景は、まさにザンダを象徴する独特の風土景観を形成しています。寺の北側の空き地は、トリン寺全体を撮影するのに最適な場所として知られています。

仏塔の壁や散在する仏塔だけでなく、寺院内部の独特な建築様式も非常に魅力的で、撮影や建築研究に値します。トリン寺の構造は帯状に広がり、本堂・僧坊・仏塔群の三つのエリアに分かれています。

主な建築物には、迦薩殿、白殿（尼僧堂）、仏塔、羅漢殿、弥勒殿、護法殿、集会殿（祖拉康）、色康殿、アティシャ経蔵殿、経堂、ラカン、僧房などがあります。

トリン寺は、何世紀にもわたって途絶えていた信仰と文化を復興させた、チベット文化史における重要な転換点となりました。後のチベット仏教や文化の発展に多大な影響を与えたのです。

その建築は、インド、ネパール、そしてチベット固有の様式が融合しており、地域の建築・彫刻・絵画芸術を研究するうえで非常に貴重な実物資料とされています。